南相馬市
原町区の
文化財を巡る
南相馬
訪問の経緯
南相馬市博物館様から、2016年から歴史的建物のペーパークラフト化のお話を
いただき、当サイトがペパークラフトを制作させていただく経緯があり、そのご縁があって
2017年12月に初めて訪問させていただいた。
・
朝日座、小林眼科医院のペーパークラフト
・
大谷家住宅、高島家蔵のペーパークラフト
南相馬市博物館では、相馬地方の伝統である、「相馬野馬追」をはじめ、
南相馬を中心に周辺地域の自然・歴史・民俗をテーマとした展示を行っている。
また、平成29年10月5日(木曜日)から12月末 まで、
「小高・鹿島・原町の大正時代の街並みとレトロな建物 ―街並み鳥瞰図と建物のペーパークラフト―
」
というミニコーナーを設けており、その展示に当サイトのペーパークラフトを展示いただいた。
ペーパークラフトについては該当期間中、希望者に数量限定で配布しているため、
欲しいと思っていただいた方は、ぜひこれを機に訪れていただきたい。
南相馬市
南相馬を知る上では、野馬追は切っても離せない。
写真:南相馬市博物館
国の重要無形民俗文化財の相馬野馬追の起源は古く、
平将門の時代にまで遡る。
いまから1000年以上前に、平将門が軍事訓練として
馬を活用し、野馬を敵兵にみたてて追い、捕らえ、
捕らえた馬を神前に奉じる祭礼として始まったといわれる。
その慣習は現在の千葉の北西部で行われていたが、
それはその後の領主・相馬氏にも引き継がれた。
鎌倉幕府が成立する時代、
相馬氏は、奥州藤原氏征伐に功があり、
源頼朝から奥州のいまの相馬にあたる所領を与えられた。
その後の家督争いにより、千葉と奥州の所領は、
それぞれ家系で分裂され、奥州の相馬氏が誕生した。
奥州相馬氏は、その後幾世もの乱世も乗り越えて、
なんと明治維新まで、この地方を統治することになり、
野馬追の伝統も脈々と受け継がれた。
その道中には、あの戦国武将、伊達政宗と対抗したり、
徳川幕府に一時は所領を没収されたり、様々な波乱があったようだ。
原町区
原町区の中心地は、常磐線「原ノ町」駅から徒歩15分ほどの距離。
2017年10月21日現在富岡駅 - 浪江駅間が震災の影響により運行休止となっているため、
鉄道で行くには仙台方面からのアクセスが便利となる。
写真:南相馬市博物館
南相馬市原町区にある野馬追通り(浜街道)もまた、その歴史が関与した通り。
原ノ町のメインストリートともいえるこの通りは、かつて野馬追行事の中心地として、
また宿場町として栄えた。
町の区画はいまでも町屋づくりの名残りがあり、
大地主が建てた建物が残り、豪壮な建物が散見する。
南相馬市は、2011年の震災により、大きな被害を受けた。
原町は比較的地盤が強く、そのため建物の被害は少なかった。
隣の小高は地盤が弱く、倒壊した建物も多かったと伺った。
ここからは、原町に残る歴史的な建物を紹介する。
原町を散策する際は、この「あしあとめぐり」を見ながらの散策をおすすめしたい。
※画像を保存して拡大するとMAPの文字も読めます。
・朝日座
原町区で国指定有形登録文化財に指定されている、歴史のある映画館。
詳しくは
別記事
で触れているが、
震災後の地域復興のため、朝日座の活用を検討する中で、歴史的建造物の
専門家とのつながりができ、それがきっかけで南相馬の建物が再評価される
というきっかけが生じたという。
増改築が繰り返され、建物は継ぎ接ぎの形跡がうかがえる。
映画館といっても築は大正12年、当時は芝居小屋として使われていた。
驚くことに、いまもその名残が残っている。
舞台袖、桟敷席、楽屋、奈落などの舞台装置。
楽屋にはいまも、芸人たちの落書きや貼り紙などが残っている。
写真:桟敷席(左)と芸人の落書き(右)
映画館としての歴史も古く、貴重な映写機が残り、
現在もこの映写機を使って上映する際は、映写技師を東京から呼びよせているそうだ。
天井はもとは格天井で、屋根裏にはいまでもその痕跡は残っているようだ。
朝日座は現在、「朝日座を楽しむ会」の有志の活動により維持・管理されている。
プロジェクターとスクリーンを新調していまでも不定期に上映会が開催される。
随所に、時代に合わせた使われ方をした跡が残り、文化財としての価値も高い。
レトロの宝庫ともいえるのは、地元会の方が骨を折りつつ、現状維持を努力した結果である。
リノベーションしたら失われてしまいかねない、当時の趣のままの良さが残っている。
・油屋
もとは呉服店だったという建物。
四角いコンクリート建築で、
シンプルなデザインやブルーの配色に意匠を感じられる。
敷地は奥行きがあり、和風建築とつながっている。
・今村醤油店
この地区の繁栄ぶりをいまに伝えるような場所。
この建物の前も、野馬追の時は騎馬が通るため、その時はタイムスリップしたかのような
光景になりそうだ。
こちらは現役で醤油・味噌・つゆなどを製造されている。
見世蔵、袖蔵、門、煉瓦造りの煙突と、魅せられる要素が詰まっている。
・銘醸館
かつては松本銘醸という酒造会社があり、
いまは展示室やギャラリーも兼ねた、観光案内所になっている。
通り沿いにある洋館は、リフォームされ小綺麗な建物になっているが、
もとは相当な意匠が入った洋館だったようで、在りし日の姿はぜひ見てみたかった。
かつての銘醸館
奥には酒蔵が続き、こちらも当時の繁栄ぶりをうかがえる。
・小林眼科医院
大正末期に建てられ、いまも現役の眼科。
正面のレリーフや左官で造られた「眼科専門」の文字などに
意匠が感じられるが、こういった文字のデザインは大正時代の流行でもあったようだ。
また、取材に訪れた際は、たまたまお隣が空き地となっていたため、
普段は見れない貴重な側面も見ることができた。
原町の散策は半日を予定していたが、見どころが多くあっという間に時間が過ぎてしまった。
私もペーパークラフトのお話をいただかなければ、南相馬にこのような文化財が残っていることを
知る機会がなかったかもしれないが、全国的にまだまだ知られていないことは残念でもある。
文化財を巡るツアーなどがあれば、十二分にこの町の魅力を感じることができると実感している。
最後に、本記事の取材時に帯同いただいた南相馬市博物館様に感謝いたします。
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