斜陽館のペーパークラフト



旧弘前区公会堂のペーパークラフト

津軽・白神の旅

五所川原・金木・弘前・十二湖

生まれ落ちるとすぐに凶作にたたかれ、
雨露をすすって育った私たちの祖先の血が、
いまの私たちに伝わっていないわけはない。
私はやはり祖先のかなしい血に、
出来るだけ見事な花を咲かせるように努力するより
他には仕方ないようだ。いたずらに過去の悲惨に嘆息せず、
櫛風沐雨の伝統を鷹揚に誇っているほうがいいのかも知れない。
太宰治「津軽」より



津軽鉄道・五能線沿線
  • 五所川原〜金木  (2012/9 更新)
      ・立佞武多
      ・斜陽館

  • 十二湖  (2012/9 更新)
      ・青池
      ・沸壷の池
      ・十二湖駅周辺
  • 弘前  (2012/9 新規追加)
      ・旧弘前市立図書館
      ・青森銀行記念館
      ・弘前昇天教会

  • 五所川原
    太宰治の叔母の家があり、少年期の太宰が足しげく通った場所。
    太宰自身、小学生期は生家のある金木と
    叔母の家のある五所川原を行ったりきたりしていたと
    小説「津軽」の中で述べている。

    五所川原といえば立佞武多。
    「やってまーれ」の掛け声とともに、
    攻撃的なリズムに乗って、この
    圧倒的な存在感の佞武多たちが出陣していく。
    立佞武多の館で本物を見たときは圧巻の一言だった。
    全長22メートルもある佞武多が、威圧的な存在感を放ちながら、
    来訪者を見下ろしている。



    祭の際にはこの館の扉が開放されて、この立佞武多たちが出陣していく。
    まるで巨大ロボットがカタパルトデッキから出撃していくようでもあり、
    その姿はぜひ拝みたいと思った。


  • 太宰の生家、いまの「斜陽館」のある金木までアクセスできる津軽鉄道は
    ここから始発となる。「津軽五所川原」は昔ながらの駅舎。


    夏場は鈴虫の音色を車内で聞ける鈴虫列車、
    冬場は暖かみが一層に増すストーブ列車と、
    なんとも旅情を誘う演出がされている。


  • 金木


    太宰の生家、現在の記念館「斜陽館」がある街。
    また津軽三味線の発祥地としても知られている。
    津軽三味線のアニメ映画「NITABOH」で名前の広がった
    開祖 仁太郎もこの地に生まれたというのも、感慨深い。

  • 斜陽館
    これは決してこの記念館に対する皮肉ではないが
    (著名人の生家の宿命というものでしょう)、
    太宰は自分の生家が見世物にされていることを知ったら
    なんと思うだろう、と考えた。
    きっと相当恥ずかしがったに違いない。
    彼の道徳や思想や惰性や諦の念を育んだ複雑な背景が、
    この館からは感じ取れる。

     ↓2012/7 再訪時


    後年、太宰が帰郷した際、雨の日に散歩した北庭の池。
    太宰が故郷を離れてから、太宰の兄が保持していた。
    太宰自身、
    「こうして、古い家をそのまま保持している兄の努力も
    並大抵ではなかろうと察した。」と残しているが、
    いまやこの建物も、その津島一家の管理からも離れていることに
    刹那さを感じた。



    金木の日暮れ。
    津軽の夕日は美しく感じられた。




  • 五能線の車窓とアンビエント音楽


    リゾート白神 くまげら

  • 十二湖までのアクセスは、五能線のリゾートしらかみで五所川原からは2時間程度。
    リゾートしらかみは座席がゆったりとしていて、日本海の素晴らしい景色を心行くまで堪能できる。
    この列車の車窓から見える風情は、写真で伝えるには惜しいものばかり。
    ぜひ、↑の動画も見てもらいたい。
    ただ列車に乗るだけでも、価値のある旅行になると思えた。




  • 十二湖は、正確には世界自然遺産に登録された地域には属さないが、
    それでも手軽に白神山地の雰囲気を堪能できる名所である。

    十二湖は有名な青池、沸壷の池、ブナの原生林、日本キャニオンを堪能したいのであれば、
    バスを含めて一時間半のコースで周れてしまう。
    しかしここを短時間で去るのはあまりに惜しく、
    光彩の移り変わりによる景色の変化を楽しみたいところである。


  • 青池


    閉ざされた空間に広がる、深い青。
    日常において"神秘"を感じれることなど滅多にないが、
    この池の光景が"神秘"そのものだった。
    この青が科学的にもいまだ解明されていないことからも、
    その神秘性は増してしまう。

    光の変遷とともに、池の様子も色彩も刻々と変化を続け、
    この池を日が暮れるまで観察していても飽きることはないだろうと思った。





  • ブナ自然林
    青池から沸壷の池に向かう途中に通る、自然林。
    世界遺産、白神山地はブナの原生林が名高いが、
    ここではその一端を味わうことができる。


  • 沸壷の池
    青池ほどの青さはないが、それが逆に色彩を豊かにしている。
    エメラルドグリーンとマリンブルーが混在する、感嘆するような色彩。
    さらに青池より遥かに澄んだ透明度があり、
    池そのものの美しさでいえば、青池以上のものがあるように思える。







  • 十二湖駅周辺
    もし少し時間が余ったり、帰りの電車まで空き時間があったら、
    十二湖駅周辺の散策もお勧めしたい。
    十二湖とは反対の方向に、海岸線の線路沿いをまっすぐ歩いていくと、
    しばらくしてトンネルに突き当たる。そこから左手に行くと
    広大な海岸線の風景が開けてくる。

    さらに小さな半島の先のほうまで行くと、
    穴が空いた不思議な岩場などが見られる。
    鯵ヶ沢や千畳敷に降りる時間がなくても、五能線の海岸線を
    気軽に堪能することができた。


    帰りの五能線から見た夕日。
    黄金色の田園風景と、輪郭がはっきりと映し出された夕日。
    津軽は美しい色彩の宝庫であるように思えた。



  • 「あれは春の夕暮だったと記憶しているが、
    弘前高等学校の文科生だった私は、
    ふとひとりで弘前城を訪れ、お城の広場の一角に立って、
    岩木山を眺望したとき、ふと脚下に、夢の町がひっそりと
    展開しているのに気がつき、ぞっとした事がある。
    私はそれまで、この弘前のまちのはずれに
    孤立しているものだとばかり思っていたのだ。
    けれども、見よ、お城のすぐ下に、
    私のいままで見たこともない古雅な町が、
    何百年も昔のままの姿で小さい軒を並べ、
    息をひそめてひっそりうずくまっていたのだ。」
    太宰治 「津軽」より





  • 弘前は古くから津軽地方の中心地だった。
    廃藩置県前までは弘前県として津軽藩の本拠地として栄え、
    その当時、現在の県庁所在地である青森は小さな漁港に過ぎなかった。



    弘前といえば、洋館のまち、りんごのまち。
    そのふたつはいずれも、宣教師から吸収したもの。
    藩政により学問を重んじ、
    東奥義塾を開校。海外より教師を招き、
    文明開化の風土をいち早く取り入れようとした。
    その藩政が根付き、弘前は
    いちはやく西洋文化を取り入れることができた。



    当時、東奥義塾高校の中にあった旧弘前市立図書館。
    この建物は弘前のシンボルといえる。

    明治に立てられた西洋建築で現在にまで残るものは、
    やはりいまに残るだけの理由がある。
    この建物も単に西洋建築のコピーをするのではなく
    和風様式も取り入れた和洋折衷で、
    シンプルで調和の取れた内装と外装がすばらしい。

    いまでは文化財となっているが、
    当時はカフェや宿として使用された。
    喫茶店としてなら想像できるが、下宿として利用していたというのは驚く。




  • 図書館に隣接する、旧東奥義塾外人教師館。
    ここには招かれた外国人教師が家族で住んでいた。
    いまは1Fが喫茶店として開放されており、2Fでは
    当時の面影を残す、洗練された洋室が見学できる。

    まるで映画のセットのように、生活感が残る居住部。
    子ども部屋やベランダの屋内ブランコなどは愛らしさが感じられ、
    たとえ異国の地でも、この家に住んでいた教師は
    充足した時を過ごしていたに違いない。

  • 青森銀行記念館
    この銀行は青森で初めて立てられた銀行で、
    建築を手がけたのは旧弘前市立図書館と同じく堀江佐吉。
    柔軟な建築思想があったからこそ、このような多彩な建物を建てられたのだろう。
    純西洋風のルネサンス様式で、堅牢さを感じさせられる。

  • 弘前昇天教会
    年季を感じさせる赤レンガは、地元弘前から採掘された。
    津軽の冬は厳しく、また凶作や飢饉は幾度となく、容赦なく農村を襲った。
    その厳しい環境の中に、キリスト教が根付く土壌があったのかもしれない。






- Click Map -




Welcome
AMFF by TAK
画像の無断転載・複製はご遠慮ください。

inserted by FC2 system