岡山
津山・真庭の
歴史的建築、

江川式建築を巡る






岡山 津山・真庭の歴史的建築、江川式建築を巡る



  • 山・真庭は古く、歴史の中心地だった大和と出雲の間にある
    出雲街道により結ばれた交通の要所。
    街道沿いにはいまも旅籠の痕跡や風情ある昔町の姿が残る。


    また、江川式建築をはじめとした、名建築がいくつも残っている。
    江川三郎八の建築こと「江川式建築」は、一度その建物を見ると、魅了される。
    氏の多くの作品に共通するものは、大広間を持つ巨大建築であり、下見板張りを使い、
    ハーフティンバー様式のようなバッテンの筋違いを持つ。

    江川氏は宮大工として修業を積んだあと、役人になり、公共建築を手掛ける中で、
    橋梁のトラス構造を学んだ。その経験を活かして、建物の内部に
    柱のない広大な空間を作ることができた。

    旧会津藩士であり、福島の出身である。
    しかし明治時代に岡山県で建築技師が不足したため氏も応援に呼ばれ、
    その経緯で岡山に氏の建築が数多く残ることとなった。

    以下の二つの建築は、今回の旅で訪れた場所ではないが、氏の建築を代表するものとなる。

  • 旧亀岡家住宅(2017年取材)
    福島、阿武隈線の「大泉駅」駅近くにある、江川三郎八の傑作建築。
    正面に聳える八角形の塔屋と2基の尖塔の姿は威風堂々としており、見入られる。




  • 吹屋小学校(2015年取材)
    石州瓦の美しい町並みが有名な吹屋に残る小学校。木造の色合いが趣深い。
    こちらは後述の旧遷喬尋常小学校と似た特徴を持つ。


    そして今回訪れた岡山県、真庭・津山にも、江川三郎八の傑作の学校建築が残っている。


    真庭
  • 旧遷喬尋常小学校
    真庭の街中に、広い校庭とともにぽつんと佇む、大きな小学校。
    遠くからこの学校が見えてくると、否が応でも気分が上がる。



    姫新線の久世駅から徒歩か、後述の中国勝山駅からレンタサイクルでもアクセスが可能。
    周辺にはここ以外のめぼしい観光地はないため、中国勝山の町並みと合わせての観光を勧めたい。
    久世駅から中国勝山までは電車の本数が少ないため、バスで行くことも可能。
    受付の方にバス停や時刻を伺うと親切に教えてもらえる。


    ドラマの舞台などでも使われているため、外観を見たことがある人は多いかもしれない。
    一度見ていれば忘れがたい、印象的な外観。
    私自身、この建物を始めて見て、こんな風変りで大きな校舎が現存するのか、と驚いた。
    以来、切に訪れてみたい場所だったため、ようやく行けたのは感無量だった。



    国の重要文化財に指定されているこの建物は江川三郎八氏の特徴がよく表れている。
    バッテンのハーフティンバーはひと際よく目立ち、
    また2階には、トラス構造の経験を生かした大きな格天井の講堂を持つ。



    モノトーン調の淡い色彩の校舎、インパクトのある屋根中央のドーマ。
    擬洋風建築でもなく、洋風建築でもなく、江川式建築と呼ぶのがふさわしい。



    真庭には、この建物を見るだけのために訪れても、十分にその価値があった。
    世界にも誇れるような、美しい校舎だった。

    次に、真庭の隣、津山の建物群に移る。

    津山

    津山は岡山駅から快速ことぶきで、一時間ほどで到着する。
    これから詳解する建物は、すべて駅から徒歩でのアクセスが可能。

  • 土居銀行津山支店
    津山に残る江川式建築「土居銀行津山支店」。
    いまは「作州民芸館」として民芸品が売られていたり、カフェも併設されている。
    希望を伝えれば2階も見学させてもらえる。


    旧出雲街道沿いに商家の町並みが続く中、
    このグレーを基調にした洋風建築が突如姿を現す。
    この建物は、江川式建築の代名詞的な特徴はあまり見られない。
    もともと1909年に銀行の支店の店舗として設立されたが、
    1920年に本店に置き換わり、その際に大正時代の新しい風を
    取り入れて、正面の外装を改修された。



    正面にはバロックの意匠などが取り入れられ、装飾的であるが、
    背面は改修の手が入らず、創設当時の姿が残っている。



  • 旧中島病院本館
    「土居銀行津山支店」の近くに建つ、1917年築の津山で最も古い病院建築。
    津山の棟梁、池田豊太郎氏の代表作といわれる。
    ドーム状の屋根が印象的で、円柱のコリント式の装飾など、
    凝った洋風意匠が見られる。
    いまは「城西浪漫館」として喫茶が楽しめる。
    迎賓館として使われていてもおかしくない、華やかな外装をしている。


  • 旧岡山県津山中学校
    こちらは1900年に建築された、美しい木造洋風の校舎。
    現役で使われる、明治時代の旧制中学校として、極めて貴重といえる。
    国の重要文化財にも指定されている。
    イタリアルネサンス様式の美しい軒下と窓枠の装飾、正面の時計塔が特に目を惹きつける。
    内部の見学はできなかったが、現役で使われている点も、無二の魅力に感じる。
    このような校舎を持つ学校に通えることは、誇りにつながると思える。



  • 城東重要伝統的建造物群保存地区
    旧出雲街道沿いのかなり長い区間に、昔町の趣ある建物が多く残っている。
    散策しているといろいろな発見があり、楽しめるエリアとなっている。


    Port ART & DESIGN TSUYAMA
    1920年に竣工した旧妹尾現行林田支店。
    外観は銀行建築にはとても見えず、寺社と思う人が多いだろう。
    私は予備知識なしに訪れ、
    寺社にしては赤レンガ門に囲まれていることに違和感は覚えていた。




    しかし、中に入るとそこは驚くほど豪勢に作りこまれた空間だった。
    窓口の特徴である、巨大な一枚板のカウンターもあり、確かに銀行の形跡があった。
    現在はアートの展示場として使われているが、銀行の店舗、煉瓦の倉庫、金庫棟など、
    異なった趣の空間が広がり、それだけでも十分に見る価値がある。



    城東重要伝統的建造物群保存地区の中でもはずれの方にあるため、
    見逃してしまうかもしれないが、津山を観光する際は
    ぜひとも足を延ばして訪れてほしい場所だった。


    勝山
    津山と同じく、旧出雲街道沿いに風情ある昔町が残る。
    津山駅から姫新線で一時間ほど、「中国勝山」で下車して、徒歩間もなく。

    中国勝山
    高瀬舟の最上流の船着場として、物資の集約地点でもあったこと、
    また出雲街道の交通の要所であったことから、勝山の街は栄えてきた。
    高瀬舟の発着場の跡は現在でも残っており、川辺に石垣が連なっている光景は、他には滅多にみられない。


    街道沿いの町並みだけでなく、川沿いの発着場跡の姿も見逃せない。



    津山、真庭には素晴らしい町並み、素晴らしい建築がたくさんあり、
    ここに詳解できない建物も幾つもある。
    2日程度の時間をかけて、じっくり散策することをお薦めしたい。


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