福井・
一乗谷

を巡る






福井 一乗谷の旅



  • 一乗谷の旅


    祇園精舎の鐘の声
     諸行無常の響きあり

     沙羅双樹の花の色
     盛者必衰の理をあらはす

     おごれる人も久しからず
     ただ春の夜の夢のごとし

     たけき者も遂にはほろびぬ
     ひとへに風の前の塵に同じ



    有名な平家物語の冒頭だが、
    自然とこの句が浮かんでくるような場所が、
    福井の一乗谷に残る。



    遺跡は遺跡なのだが、
    縄文や弥生時代、平安時代のものでもなく、
    わりと近世にあたる、馴染みやすい「戦国時代」の遺跡であり、
    しかも、あの織田信長によって滅亡に追いやられた都。

    だからこそ、はるか遠い昔、神話のような絵空事の時代よりも、
    より実感を伴い、一時代の栄華の痕跡を辿ることができる。



    九頭竜線は福井駅から走るローカル線。
    遺跡には、一乗谷駅からアクセスできる。
    電車はもちろん単線で一時間に一本程度しか来ないため、
    時間の都合では福井駅からの直通バスを検討したい。



    一乗谷駅は、小さな待合室があるだけの無人の田舎駅。
    正直、こういう観光スポットの駅はもっと発展しているかと想定していた。
    周囲にはお土産店や売店の一件すらない。田んぼの真っただ中という具合である。
    福井駅からわずかしか離れていないのに、そこはすでに秘境の入口という
    雰囲気を醸し出している。


    駅にはコインロッカーもなければ案内所もないため、
    もし荷物を預けたりレンタサイクルをしたい場合は、
    駅から近くの福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館に立ち寄れば、借りることができる
    (いずれも数は多くないため注意)。




    一乗谷駅からは徒歩30分ほどで一乗谷のメインとなるスポットまでたどり着ける。
    レンタサイクルもできるが、途中にも随所に遺跡があり、あまり駆け足で
    行くと見逃してしまう。徒歩で遺跡の中を散策しながら向かうことをお勧めしたい。



    国土の狭い日本の中で、これほどの規模で、
    かつて栄えた都市の姿がまるまる眠っていた場所は、ほかには見当たらない。
    谷底で交通の便もよくないこの場所だからこそ、遺跡が破壊されずに残ることができた。
    その価値は確かなもので、国の三重指定(特別史跡・特別名勝・重要文化財)
    に指定されている。国の三重指定を受けている場所は全国に6か所しかなく、世界遺産ばかり。
    ここにも世界遺産級の価値があるといっても過言ではない。


  • 唐門



    一乗谷を代表する景観のスポット。
    この門も現代に再建されたものだろうと思い込んでいたが、
    もともとは豊臣秀吉が朝倉義景の善提を弔うために
    寄進したものと伝えられ、現在のものは江戸時代の中期に再建されたものらしい。



    近年、秀吉が信長に対して「朝倉氏滅亡」を伝えた書状が見つかったらしいが、
    秀吉は焼き尽くされた一乗谷の都を見て、思うところがあったのだろうか。




  • 諏訪館跡庭園



    一条谷で最も規模の大きい、廻遊式林泉庭園ということ。
    一乗谷に残る庭園はいくつかあるが、その中でも一番”それらしい”庭園の姿をしている。



    和風庭園の遺跡など、これまで見たことがない。
    計算され、丁寧に整えられた姿が魅力の和風庭園とは明らかに違うが、
    その姿は息を呑むほどに美しかった。
    苔むして荒んだままの岩々だが、
    人口から自然に帰らんとするその姿は、まさに諸行無常を体現しているかのようだった。
    滝の横にある滝副石は、日本最大らしいが、いまは墓石のような役割をしている。

  • 復原町並



    再現された町並みも、かつてそこにあったものの姿をそのまま復原している。
    周囲にはその景観を阻害する現代的な要素、ビルや電信柱といったものが何もなく、
    あるのは一乗谷の美しい自然のみ。そのため、この空間に没入できる。





    ここまで見てきた遺跡とは違い、ここでは当時の武家や町屋の生活を、
    人々が行き交った往来の姿を、より身近に意識することができる。
    当時は、こんな町並みがずっと広く広がり、最盛期には1万人もの人々が暮らしていた。
    その時勢には京の町でも20万人ほどの人口だったというから、
    このような僻地とは到底思えないほど発展した都だったのだろう。



    そんな街が、信長の家臣、柴田勝家の命により火が放たれ、
    100年の栄華が、たった数日間で文字通り灰燼に帰した。
    戦国時代の事とはいえ、やはり戦争とは恐ろしいものだと実感する。



    一乗谷は秘境のイメージがあり、訪ねてみるとその自然の豊かさ、美しさからも
    まさにイメージ通りの印象を受けるが、実際のところ福井駅から
    バスや電車でも近く、気軽にアクセスできる秘境といえる。

    ここはいまのところ、大々的な観光地のように、土産店が建ち並び、
    アミューズメント施設と化した建物が出迎えるような場所ではない。

    そこが何よりの魅力で、あるのは美しい自然と広陵とした遺跡のみ。
    それだけしかないとも言えるが、何かを訴えかけてくるような、
    ここにしかないものが確かにあった。








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