宮沢賢治の作品は、多くを説明しようとはしない。
 彼の直筆の文章を見ると、幾つもの取り消し線が引かれ、文章は無駄なく研ぎ澄まされている。
 暗に誡めや警句や批判が含まれているが、それを押し付けようとはせず、読み手にゆだねている。
 彼は童話作家としてゆえ、もしくは誠実な人柄ゆえ、その思想を他人に押し付けるようなスタンスは好まなかったに違いない。

 賢治の晩年のライフワークともなった「銀河鉄道の夜」には完成に至るまでに迷いが見え、それ故に賢治の思考の模索の一旦を垣間見れる。

 最終稿では登場しないブルカニロ博士は、いわば賢治の思想の代弁者として、彼の「実験」を披露する。その思想のインパクトはあまりに大きい。
 しかし、それゆえにカムパネルラの喪失感といったものが、博士の存在により緩和されてしまっているように思える。
 この物語はカムパネルラの喪失なくして成立はしない。それゆえに賢治は、博士の出演を取りやめたのかもしれない。

 その博士がジョバンニに語った言葉の数々は、賢治が「ぼくたち」に向かって贈った、「ほんとうのしあわせ」を探すための道しるべである。


宮沢賢治の旅

                        イーハトーブは一つの地名である。
                        強て、その地点を求むるならばそれは、
                        大小クラウスたちの耕してゐた、野原や、
                        少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、
                        テパーンタール砂漠の遥かな北東、
                        イヴン王国の遠い東と考えられる。
                        実にこれは著者の心象中に、
                        この様な状景をもって実在した
                        ドリームランドとしての日本岩手県である。
                        そこでは、あらゆる事が可能である。
                        人は一瞬にして氷雪の上に飛躍し
                        大循環の風を従へて北に旅することもあれば、
                        赤い花杯の下を行く蟻と語ることもできる。
                        罪や、かなしみでさへ
                        そこでは聖くきれいにかがやいてゐる。

                           (「注文の多い料理店」ちらしより)



岩手県 花巻周辺


  • 花巻駅からイギリス海岸までは、徒歩で約20〜30分。
    駅からイトーヨーカ堂の方に向ってずんずん進む。
    ヨーカ堂の近くには花巻城跡もあって、ちょっと寄り道。
    国道4号線を過ぎればもうすぐ。

    ・花巻駅周辺
    観光案内所、おみやげやさんがぽつぽつとあります。



    ・花巻城跡
    城壁の小道に沿ってお散歩すると清々しい気分に。



    ・イギリス海岸
    イギリスのドーバー海峡と同じ地層ということから賢治が名づけた
    実際にバタグルミの化石などが出土され、
    「銀河鉄道の夜」のプリオキシン海岸のモデルになったところ。
    風景そのものに特別なところはないけれど、
    その背景を踏まえると味わい深い。

    自分が訪れた時は水位が上がっていたせいか、
    その特徴的な水底の白い泥岩があまり見れなかった。




  • 新花巻駅から宮沢賢治童話村まで、
    徒歩で20〜30分。標識もあまりなくて、
    徒歩で行くにはちょっと不便。
    釜石線の線路沿いの道路をしばらく進むと、
    記念館の標識が立っています。
    童話村〜賢治記念館までは無料の送迎バスが出ています。

    ・新花巻駅周辺
    新幹線停車駅のわりに、ただっぴろく閑散とした駅前。


    ・宮沢賢治記念館
    賢治の芸術・信仰・科学・農業・思想・風土のすべての断片を
    堪能できる、充実した展示内容。
    自分が行った時は「風の又三郎」の企画展がやっていました。

    建物の横の「猫の事務所」で記念撮影ができます。
    かま猫の気分を味わいましょう。

  • ポランの広場
    記念館から脇の小道に入ってすぐにあります。
    賢治の生前の設計をもとに作られた広場。


  • イーハトーブ館
    ポランの広場からすぐ近くにあります。
    イーハトーブ、つまり岩手そのものについての資料が展示されていたり、
    賢治のグッズ類も豊富に揃えている。


  • 宮沢賢治童話村
    ここはお子様向けの賢治テーマパークといったところ。

    賢治の有名な水彩画、「月夜の電信柱」を彷彿とさせる。


  • 「下ノ畑ニオリマス 賢治」でおなじみの羅須地人協会は、
    街のはずれにひっそりと佇んでいるような印象です。
    花巻駅の七番バス、花巻空港経由で二枚橋に下車すると、
    そこから徒歩20分ぐらい。
    徒歩にはちょっと不親切な場所かもしれません。
  • 花巻農業高校周辺
    ここを歩いている頃に、ちょうど雨に降られました。
    晴れた景色はまた素晴らしそうな土地です。

    ・羅須地人協会
    花巻農業高校の入り口。この広い敷地の中に羅須地人協会は建っています。

    賢治の家。移転されてはいるものの、当時の雰囲気をそのまま遺している。

    風雨に対して野ざらしになるところにあることが驚いたけれど、
    どうやら字が薄くなると、農学校の生徒たちが上から書き足すらしい。
    それでも、賢治の暖かみが伝わってくるような気がする。





- Click Map -




Welcome
AMFF by TAK
画像の無断転載・複製はご遠慮ください。

inserted by FC2 system