宮沢賢治の作品は、多くを説明しようとはしない。 彼の直筆の文章を見ると、幾つもの取り消し線が引かれ、文章は無駄なく研ぎ澄まされている。 暗に誡めや警句や批判が含まれているが、それを押し付けようとはせず、読み手にゆだねている。 彼は童話作家としてゆえ、もしくは誠実な人柄ゆえ、その思想を他人に押し付けるようなスタンスは好まなかったに違いない。 賢治の晩年のライフワークともなった「銀河鉄道の夜」には完成に至るまでに迷いが見え、それ故に賢治の思考の模索の一旦を垣間見れる。 最終稿では登場しないブルカニロ博士は、いわば賢治の思想の代弁者として、彼の「実験」を披露する。その思想のインパクトはあまりに大きい。 しかし、それゆえにカムパネルラの喪失感といったものが、博士の存在により緩和されてしまっているように思える。 この物語はカムパネルラの喪失なくして成立はしない。それゆえに賢治は、博士の出演を取りやめたのかもしれない。 その博士がジョバンニに語った言葉の数々は、賢治が「ぼくたち」に向かって贈った、「ほんとうのしあわせ」を探すための道しるべである。 |
宮沢賢治の旅 イーハトーブは一つの地名である。
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