エルミタージュ



                     ピョートル大帝がネヴァ川沿岸に築いた冬宮を礎に、
                   歴代皇帝たちが増改築を重ねた。
                   エカテリーナ二世が225点の絵画を購入したことから
                   美術館としての機能が始まり、
                   その後の皇帝によってコレクションは膨らんだ。
                   しかし、専制的な皇帝ニコライ一世が独断で作品を売却してしまったり、
                   第二次世界大戦前後にも作品が流出するという悲運に見舞われた。
                   そんな紆余曲折を経て、エルミタージュは現在の姿に至った。




エルミタージュ美術館
  • エントランス・宮殿内部
      ・ヨルダン階段
      ・ピョートル大帝の間
      ・紋章の間
      ・ゲオルギーの間
      ・時計「パウリン(孔雀座)」
      ・ラファエロ回廊

  • ルネサンスとフランドル絵画
      ・レンブラント
      ・ルーベンス
      ・レオナルド・ダ・ヴィンチ

  • 印象派からキュビスム
      ・ルノワール
      ・モネ
      ・セザンヌ
      ・アンリ・ルソー
      ・ゴッホ
      ・ゴーギャン
      ・マティス
      ・ピカソ
      ・ドンゲン



     エルミタージュは美術館としてもさることながら、
     歴代ロシア皇帝の華やかで壮大なロマンが眠っている。

  • ヨルダン階段
    入り口からこの階段を登ると、芸術の世界へといざなってくれる。
    このミスショットに近い写真からではあまり伝わらないが、
    ダイナミックな広がりを持った空間。


  • ピョートル大帝の間
    ペテルブルグの父、ピョートル大帝と、戦の女神ミネルヴァが並んだ絵画が
    飾られている。絵画の下に置かれるのは、アンナ・ヨアノヴナ女帝の王座。


  • 紋章の間
    眩いばかりのシャンデリア。
    その姿はまるで中世の豪勢なダンスホール。


  • ゲオルギーの間
    冬宮を象徴する広間。この部屋の美しさを際立たせているのは、
    一面に用いられた白いカラリアの大理石。
    この部屋はロシア皇室の歴史と密接に関わってきた。
    部屋の白の美しさは床との対比があってより際立つものだが、
    写真ではお伝えできなくて残念。

    ゲオルギーの間の王座。
    エカテリーナ二世以降の歴代の皇帝が、
    ここに腰掛けたのだろう。


  • 時計「パウリン(孔雀座)」
    ところは変わって、こちらは小エルミタージュ。
    エルミタージュは「隠れ家」の意であり、
    小エルミタージュは特に、エカテリーナ二世が
    演劇会や夜会を楽しんだ、お気に入りの場所だったようである。
    この黄金の孔雀の置物も凝っていて、
    孔雀が大げさな声で鳴くというからくり時計だったりする。
    因みにこれは、エカテリーナ女帝の生涯のパートナーとなった
    ポチョムキンが女帝に贈ったもので、彼のユーモアセンスの表れでも
    あるようだ。女帝もこれを大切にしていたことが伺える。


  • ラファエロ回廊
    お次は新エルミタージュにあるラファエロ回廊。
    ここはエカテリーナ二世の命により造られた、
    バチカンの宮殿回廊が複製された場所。
    この美術館はロシアの多様な文化性を垣間見させてくれる。





  
    エルミタージュの膨大な展示を事細かに眺めていったら、
    ゆうに一ヶ月の時間は必要かもしれない。
    ここでもその一部しか紹介できないのは残念である。

  • レンブラント

    エルミタージュのレンブラントの所蔵数には驚かんばかりだ。
    20点以上の作品が部屋を埋め尽くしている。

    「ダナエ」

    エルミタージュには、ティツィアーノ作の「ダナエ」と、
    レンブラント作の同テーマが置かれている。
    これはギリシア神話のエピソードで
    黄金の雨に姿を変えたユピテル(ゼウス)が、
    熱愛するダナエの元に舞い降りるという、愛の交わりを描いたもの。
    ティツィアーノの同作と比べると、ダナエはユピテルを
    待ち受けているかのように見え、より官能的な印象を抱く。


  • ルーベンス
    「ルーベンスの描く宗教的な主題は芝居がかっているが、
    女となると話は違う。彼の描く女はそれだけで
    宗教的で哲学的な深みを見せてくれる。」
    これはゴッホが遺した言葉。


  • レオナルド・ダ・ヴィンチ
    エルミタージュに飾られるダ・ヴィンチの作品は二点ある。
    写真の「リッタのマドンナ」ともう一点は「ベヌアのマドンナ」。
    初期の作品「ベヌアのマドンナ」に描かれた聖母子像の姿は、
    後輪を除けば神的なものは感じられない、市民的な母と子の姿だった。
    一方のこちらは、計算されて緻密な構成を持っている。
    聡明で繊細な人物の表情、聖母の姿を強調する、青と赤の鮮やかな衣。
    こちらの方が、明らかに完成されていると思った。


  • 明らかにモナリザを主題にさせた作品。
    これについての詳細は見逃してしまったが、
    ダヴィンチの弟子の習作だろうか。






    創玄な歴史的産物に囲まれていることに息切れを感じたときに、
    近代絵画を観るとホッとできる。

    私がエルミタージュを訪れた時は、
    上野で「大エルミタージュ展」が開催されている最中だった。
    そのため私は上野にも足を運ばせなければならなくなったのが、
    些か残念ではあった。

  • ルノワール
    ルノワールの画風は年代ごとに大きく変遷している。
    初期のロココ時代、シスレーやモネとの交流から生み出された印象派時代、
    アングル時代から、晩年の神話やギリシアに回帰した時代である。
    そしてここで取り上げたのはいずれも印象派時代の作品。
    どれも色彩が豊かでモチーフも生き生きとした、素晴らしい絵画だった。

    「小さな鞭を持った少年」
    愛らしい少女の絵だと思ったら、少年だった。
    ルノワールの絵に限っていえば、よくあることです。

    「女優ジャンヌ・サマリー」

    「Head of a Women」


    ・モネ
    エルミタージュには、睡蓮の絵は一枚もない。
    モネに関しては唯一、その点が残念ではあった。
    「Poppy Field」
    こちらは中期ごろの作品。
    印象派としてのスタイルも熟成されていて、
    色彩は輝いているように明るく、思わず見入ってしまう。

    「庭の女」
    こちらは印象派の日の出以前の、初期の作品。
    写実的でこれはこれで魅力あるが、まだ色彩が輝いていない。


  • セザンヌ
    光の変遷を追い求める印象派とは対立的な姿勢を示し、
    幾何学的な視野を持って、絵画を再構築物と捉えたその前衛さは、
    その後のキュビスムの画家たちの礎にもなった。
  • The Banks of the Marne (Villa on the Bank of a River)
    自然を円筒形と球形と円錐形で捉えるというセザンヌの視点。
    幾何学には温もりを感じないため、冷たい印象を受ける。

  • 「カーテンのある静物」
    デフォルメされた静物。日本人にとっては漫画的に見えるかもしれない。



    ・アンリ・ルソー
    40代の後半から画家を志したという遅咲きで独特な画家の作品。
    彼は遠近法を無視し、主題を大きく描くという子供のような視野で絵を描いた。
    そんな彼の作品が初めて日の目を浴びるきっかけとなったのが、
    ピカソが偶然に彼の作品を見出したことだった。
    この絵のように、自然をテーマにした晩年期から、
    ようやく世間に認められるようになったらしい。




  • ゴッホ
    27歳に画家を志し、生前に売れた絵は一枚のみ。
    ゴーギャンとの不和から耳をそぎ落とし、精神病院へ入院。
    それでも描き続けたゴッホにとって、絵画とは唯一、
    人生を繋ぎとめておくものだったのかもしれない。

    「わらぶきの家」

    これはゴッホ最晩年に描かれた作品。


  • ゴーギャン

    ゴーギャンを理解するためには、タヒチ紀行「ノアノア」などに目を通す必要があることを、
    彼自身も認めている。タヒチに残るオセアニアの宗教には、輪廻の思想があり、
    その背景にはバラモン教の布教があったのではないかと言われている。
    その意味で、ヒンドゥーや仏教と根幹が一致しているため、
    我々が彼の絵を眺める時、思想の上でも東洋を感じる理由になりうる。





    ・マティス

    厳密にいうと、彼の絵画はフォービズムに属する。
    純粋さを追い求めて単純化を突き進めた彼は、
    その中で色彩を最も引き立てる手段として、
    晩年には切り絵の世界を切り開く。
    この静物画は私には魅力的に映るが、
    まだ単純化が完全に推し進められてはいなかったのだろうか。

    「ダンス」


    ・ピカソ
    構築と破壊を繰り返し、スタイルなきスタイルを貫いたピカソ。
    それだけに、彼の作品に対して何かを述べようとすることも、非常に難しい。
    少なくとも自分のなけなしの感性では、画家自身の説明を必要としてしまう。
    フロイトの精神分析の影響が波及しだした以降の画家すべてにもいえること
    かもしれないが…。

    「Woman with a Fan」


    ・ドンゲン

    エコール・ド・パリの画家の一人。
    私は目黒にある松岡美術館で初めて彼の作品を観て、
    この作品と同様に、
    ドガの描く踊り子のような妖艶さと、独特な官能な雰囲気を持った
    婦人の姿に惹かれたのを覚えている。




    なお、エルミタージュ美術館のほぼすべての作品は、
    エルミタージュ美術館公式HP
    で閲覧できます。
    とても良質なHPなので、オススメです。



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